コラム担当2回目にして思うことです。

我々がクライアント企業様や候補者様から伺うお話は、経営状態からキャリア展望まで、どれをとっても全てが個人情報のかたまりです。示唆に富む考えさせられるお話、感動的なできごと、勇気をもって自己開示して頂けたことなど、日々こころを動かされることばかりであり、こうした話に数多く触れられるのはこの仕事の醍醐味だと思います。

しかし上個人情報ばかりであるがゆえに、「これは広く人に知って欲しい」と思っても、なかなかお伝えすることができないのは残念でもあります。

そんな中で、私自身のずっと昔の話をひとつさせて頂きたいと思います。

当時、私はエグゼクティブ・サーチのリサーチャーを経てコンサルタントになったばかりでした。過去にコンタクトのあった経営者のAさんにコンサルタントとして初めてお会いする機会を得て、とても緊張して訪問をしました。Aさんが私のことを一人前のコンサルタントとして扱って下さったことが大変嬉しく、有難くも気持ちが引き締まったことが鮮やかに思い出されます。

そのAさんに、仕事の区切りがついたタイミングで一緒に食事をする機会を頂きました。その際に「Aさんとこのような形でお仕事をさせて頂くとは、リサーチャーをしている当時は夢にも思っていませんでした。こんな私が笑っちゃいますよね」とお伝えしたところ、それまでの和やかな雰囲気が一変し、大変厳しく叱られました。

「誰が笑ったとしても、自分で自分の仕事を笑ったりしてはいけない!」

Aさんはそう言って私を一喝された後、「……で、なんだっけ」と、さらりと話題を変えて下さいました。当時の私は「ひー」と縮み上がり、深く考えもせず、ただただ自分の発言をお詫びした記憶があります。

以来、私はこの言葉を折に触れて思い出すようになりました。

なぜこれほどまで、というくらい響いたのは、人様のしごとについて(時にはその方以上に)真剣に考える職業だからでもあり、また自分自身に対しても「このしごとに妥協はないか」「自分に笑われないか」と思うようになったからでもあります。

今の季節のように、節目の時期には必ず思い出すエピソードです。(黒川)