子供の頃、焚き火が好きでした。実家や祖母の家の庭で落ち葉などをしょっちゅう燃やしていた記憶があります。うちでは「野焼き」と称していましたが、野外など広大な面積を害虫駆除などの目的で計画的に焼き払うアレとは違うのだ、ということを今調べて初めて知りました。単純に「野外で火を起こすこと」を「野焼き」と言っていたようです。

一斗缶を使ったり、集めた落ち葉をこんもり山にしたりと、様々な形で焚き火をしていました。あまりにも日常的な風景だったので、芋を焼くといったイベント的な思い出ではありません。ただあの空気感と匂い、そして大人に「危ないから近づきすぎるな」としょっちゅう注意されていた記憶が強く思い起こされます。
首都圏では焚き火が条例で禁止となって久しいですが、作りもしないのに直火対応のテラコッタ製薫製マシーン(?)が今だに実家の庭先に転がっているので、もしかしたら今でも細々と続けられているのかもしれません(小声)。

かく言う私も両親が海外旅行でしばらく家を留守にした際に、実家でこっそりこの薫製装置で手紙や古い日記を焼いたことがあります。特に処分に困っていたわけでもないのですが、ふと思い立って燃やしてみたところ、燃料としては歯ごたえのない材質なので、本当にあっさり、めらっと炎が立ち上ってあっという間に灰になってしまいました(なのでご近所に迷惑をかける心配もなく無事に終了しました)。それから無性に焚き火がしたくなり、調べると世には焚き火バーなるものまであることがわかり、グランピングまでしなくても近場で焚き火を楽しめることが分かりました。つまりそれくらい世間は焚き火を求めているようなのです。実際に聞いてみると私の周りに「焚き火マニア」は結構いることが分かりました。

「昔はタダで、そこら中で焚き火ができたのにね」と言いながら、有志たちと灰にしたい思い出の品を持ち寄って燃やし、あとは適切な燃料を使ってホットワインで締める、そんな素敵な焚き火会を海岸でやったのは良き思い出です。
ちなみにその時に灰にしたのは、高校時代に頂いたラブレターでした。別に灰にしなくても良かったかなと、今ではちょっと思っています。(黒川)