下山は、一面に敷き詰められたキャットフードのようなザクザクの路面に足をとられてとにかく滑りまくるのですが、これまた単調な道をひたすらジグザグに下っていきました。
しかしこんな時間に下山する人はあまりいないため、途中で休憩しながら静寂の中の星空を満喫することができました。

一切の無音の中で、この空が宇宙の一部だと深く思い知るような星空を見上げているのはなんとも贅沢でした(肉眼で天の川が見られました)。
人っ子一人いないので道で大の字になり空を見上げていると、視界を時折流れ星が横切るのですが、それはそれは美しかったです。

そして自分たちしかいない場所で、じっくりと朝日が生まれる様子を見ることができました。
一面の雲海がすこしずつ白んでくる中、湖から雲が流れるように山脈を下っていくのを眺めながらご来光を待ちました。
「太陽を赤く描くのは日本人だけ」と聞いたことがあるのですが、あれは東からのぼる朝日のことだったのだ!と初めて身をもって知ることができました。
旭日旗のように赤い帯が放射状にのびていき、栄養豊富な半熟卵のようにうるうる揺れながら赤い太陽が昇ってくるのは圧巻でした。
あんなに寒かったのに、いつのまにか生あくびもとまっており、太陽は本当に偉大です。
(しかしこの「バンパイア登山」は日没から日の出までのツアーであり、のぼってしまった太陽はただの日焼けの天敵になり下がるという・・・)

朝の7時台には帰りのバスに乗っていたので、12時間ないくらいの富士山ツアーでしたが、3週連続の初級・中級・上級登山はとてもいい経験になりました。
実はこの日は私にとっての大吉方位日で、この日この場所にいることに大いに意味があったのですが、何となく色々な人のために富士山に行った気がしています。
方位を教えてくれた方、装備を貸してくれた方、手取り足取りご指導して下さった方、応援して下さった方々に心から感謝します。(黒川)